だ・か・らっ、Dia“l”yだってばさ!

これは『戯れ言』です。また、“Diary”ではなく“Dialy”です。つまり、日記に似て非なるものです。 所謂『日記』ではありません。お間違えの無いようお願いします。(^^;A

大口径Lensの被写界深度について考えてみる

個人的には大口径広角Lensの存在意義を認めておりません。飽くまで、主観に基づく個人的嗜好ですが。勿論、大口径Lensが一般に大型で重く高価であることもその理由ではあります。*1 しかし、それ以上に存在価値そのものを否定せざるを得ない理由が二つあります。


その一つは被写界深度。様々な作例、例えばNikon Imagingの24/1.4の作例など、において、(24 mmでありながら)この浅い被写界深度(ボケ)は大口径であればこそ、などの様に言われたりします。確かに、同じ距離同じ構図で24/2.8を使えば被写界深度は口径比の分だけ深まり、ボケは減るでしょう。しかし、24/1.4の被写界深度そのものはさほど浅くないのです。
被写界深度の目安として過焦点距離を計算してみましょう。過焦点距離は以下の式で計算できることは以前書いています
焦点距離 = Lensの焦点距離^2/(絞り値×許容錯乱円径)
とある大口径Lensと同じ過焦点距離になるF2.8なLensの焦点距離を求めます。鑑賞サイズや鑑賞距離の関数となる許容錯乱円径はLensに依存しませんので、計算の途中で分母と分子に入るため消えます。よって
焦点距離2^2 = 焦点距離1^2/絞り値1×絞り値2
となります。絞り値2をF2.8固定とすると、
焦点距離2 = SQRT(焦点距離1^2/絞り値1×2.8)
となります。焦点距離1と絞り値1に24/1.4, 28/1.8, 35/1.4, 50/1.2, 55/1.4, 85/1.2の各値を代入し、同じ過焦点距離となるF2.8をもつLensの焦点距離を割り出したのが以下の値です。

元のLens 24/1.4 28/1.8 35/1.4 50/1.2 55/1.2 85/1.2
算出値 33.84 34.92 49.50 76.38 84.01 129.84
同等Lens 35 35 50 75 85 130

24/1.4や28/1.8は35/2.8と同程度の過焦点距離です。以下同様に、35/1.4は50/2.8, 50/1.2と55/1.2は75/2.8と85/2.8、85/1.2は130/2.8であり135/2.8はより過焦点距離は小さくなります。
24/1.4と同程度の過焦点距離、つまりは被写界深度は35/2.8で得られてしまうのです。勿論、画角は異なりますから同じ写真が撮影できるわけではありません。*2 ですが、被写界深度の浅さを求めて大口径へ行くのを個人的には正しい道だとは思えないのです。*3 35/1.4と同程度の過焦点距離(被写界深度)は50/2.8で得られてしまうのです。各社からリリースされている小型軽量安価な50/1.8等を使えば35/1.4より遙に浅い被写界深度が得られます。当然、35 mmと50 mmは違います。大きく異なっています。が、重厚長大高価を許容できるほどの差とは私には思えません。重厚長大高価を許容できる方々にとっては意味のある35/1.4なのでしょう。


もう一つの点は、絶対値としての明るさです。F1.4ならF2.8よりも2段分明るいので、シャッター速度は二段速くできます。が、ここにも落とし穴が。
撮像素子にはPD(フォトダイオード)が使われており、そのPDの前には集光するためのマイクロLensが存在しています。このマイクロLensにも当然F値があります。ほとんど公表されていないような値ですが、あまり大口径(でいいのか?)ではないようです。特に昨今の高画素化あるいは小型撮像素子においては暗くなるのは物理的に見て不可避でしょう。正確な値が公表されていないので怪しい話にはなりますが、F1.3前後であるとかF1.8に近いとかそれぞれの撮像素子によっても変わるのでしょうがあまり明るくはないようです。ROM付きの純正Lensを使う場合は、マイクロLensのF値に合わせて内部的にISO感度を上昇させているという噂もあります。まぁ、そうでもしなければ露出アンダーになりますから、さもありなんといったところでしょうか。こうなってくると、ハイスピードLensとしての大口径の意味も怪しくなってきます。光量が十分な場合にはISO感度の(ブラックボックス内での)上昇も弊害は無いでしょうが、ハイスピードLensとしては光量が不足しがちな場面でこそその存在価値があるわけで・・・。流石にマイクロLensの口径比がF2.8近いなんてことはないのでしょうが、下手すればF1.4やF1.8でもマイクロLensの口径比を上回っているかも知れない。にも関わらず重厚長大高価を受け入れるとか有り得ません。
また、マイクロLensの問題を無視したとしても、大口径によるシャッタースピードの上昇が単純には手振れ対策になりにくいという現実もあります。重く大きく長くなれば手振れはし易くなります。シャッタースピードが二段も速くなれば重厚長大による不利益を補って余りあるでしょうが、実質は2段分は無いということでしょう。*4


ごちゃごちゃと書き殴ってきましたが、被写界深度的にも明るさ的にも重厚長大高価を許容できるほどの価値は認めていない、という屁理屈でした。
(このBlogが『戯れ言』であることをお忘れ無きよう w)

*1:光学トリミングLensが嫌いな理由の一つも同じです。

*2:ここで、Lensの“味”については無視することにします。味は焦点距離や口径比というよりも、個々のLens固有の値だと考えた方がリーズナブルでしょうから。

*3:無論、プロとなれば話は別でしょうし、ハイアマの方々にも、その他の方々にもそれぞれの考えが御座いますでしょう。これは飽くまで私個人の考え方です。

*4:被写体ブレに関しては2段分そのまま効果がありますけど。